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小説「Excel依存の闇と希望」——属人化の壁を破った1人のエンジニアの物語


小説「Excel依存の闇と希望」——属人化の壁を破った1人のエンジニアの物語

大阪市内の中堅製造企業「光陽パーツ株式会社」。創業から40年、主力は自動車部品の加工・出荷。従業員は100名あまり、事務部門では約15名がExcelで日々の伝票処理、出荷管理、売上集計を行っていた。


その中の一人、経理課の三浦沙織は、ある日、自分の作業を速く終わらせたい一心で、YouTubeで見つけた「マクロで仕事を効率化」という動画に興味を持つ。VBAという言葉も知らなかったが、なんとか見よう見まねでコードを組み上げ、帳票の整形や集計作業を自動化するマクロを作成した。


その成果は、目を見張るものがあった。

それまで2時間かかっていた日次の売上整理が、たった3分で終わるようになったのだ。社内では「三浦マクロ」と呼ばれ、他部署からも使わせてほしいと声がかかるようになった。

しかし、それは“Excel神話”の始まりに過ぎなかった。



崩壊の兆し


ある年の4月、三浦は突然退職することになった。家庭の事情だった。送別会では「三浦マクロを作ってくれてありがとう!」という声が飛び交ったが、その翌週から、事態は急転直下する。


業務フローが少し変わったことで、マクロが途中で止まるようになったのだ。


エラーの意味も分からず、「はい」を何度もクリックするだけの毎日。別の社員がVBAの中身を見ようにも、三浦がつけたコメントはほとんどなく、ファイル構成も複雑。コードには謎の変数名が並び、誰も手が出せなかった。


結局、業務はすべて手作業に戻った。残業は増え、納期遅れも発生。経営陣は危機感を抱き始めた。



救世主の登場


社長の佐伯は、思い切って外部から“VBAの専門家”を呼ぶ決断をした。


紹介されたのが、スキルマーケット「ココナラバ」で業務改善を請け負っている個人事業主・工藤雅志だった。


工藤はプログラマーというよりも、現場改善のプロフェッショナル。ココナラバ上ではこれまでに600件以上の案件を請け負い、異業種・未経験分野の業務でも依頼者のヒアリングから仕様策定、実装、そして継続的な保守対応までを一人でこなしてきた。


彼の最大の強みは、「初対面の依頼者でも、短時間で要件を引き出し、現場にフィットした解決策を即座に構築する力」。常時10件以上の案件を同時に抱え、すべての保守を長期的に対応するタフな対応力も併せ持つ。


工藤はまず、三浦のマクロを分解し、可読性の高い形で再構築した。

部品管理、売上伝票、出荷スケジュールなど、各部署の実務をすべてヒアリングし、現場の言葉で仕様書をまとめた。各システムにはエラーハンドリングとログ出力もつけられ、マクロが止まっても原因が分かるように整備された。


「マクロがブラックボックスであってはいけない。Excelはみんなの道具ですから。」

工藤のこの一言が、社員たちの姿勢を変えた。



定着と拡張


工藤は週2日、専属の業務改善担当として出社するようになった。


彼が作るツールはすべて、共通仕様に基づいて管理され、社員にも「引き継げるマクロ」を教える研修を開いた。管理台帳、文書テンプレート、日報記録システム──改善は次々に進んだ。


特に成果が大きかったのは、**現場の“根っこの業務”**に手を入れられたことだった。


例えば、検品作業の報告表。Excelを使ったチェックリストを、バーコードスキャンと連動してリアルタイム集計するマクロを組み込むことで、紙と転記の手間がゼロになった。これにより、月70時間の人件費削減につながった。


こうした細かい改善は、外注システムベンダーには絶対に頼めないことだった。


Excelのように現場で使われている“泥くさい”部分を改善できるのは、現場に入り込める人間だけだった。



エピローグ:Excelの再評価


数年後、「光陽パーツ」は業務改善の社内事例として新聞に取り上げられた。


VBAによる業務自動化の成功例として注目され、「属人化マクロの解消」という言葉が広まるきっかけにもなった。


現在も工藤は同社の専属VBA開発者として活動しながら、全国の中小企業に向けて、“自動化のその先にある持続可能な業務”のあり方を伝えている。


■ メッセージ(あとがき)

「Excel VBA」は魔法の道具ではない。 だが、正しく使えば、現場に革命を起こす。 その鍵を握るのは、ツールそのものではなく、 “使い手”の理解と“守り手”の存在だ。

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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