【開発事例】造船所の溶接ロボット教示データをExcel VBAで自動生成!現場の省力化と精度向上を同時に実現
- yuji fukami
- 6月4日
- 読了時間: 3分
更新日:6月21日
※掲載している内容・資料は、実際の案件に基づきつつ、個人・企業が特定できないよう内容を一部加工・再構成したものです。守秘義務に配慮し、実際の顧客情報等は一切含まれておりません。
概要
造船所では、労働力不足や作業効率の向上を目的に、溶接ロボットの導入が急速に進んでいます。しかし、その導入効果を最大限に活かすには、「ロボットに指示を出す教示データ」の作成が不可欠であり、この作業が現場の大きな負担となっていました。
今回、Excel VBAを活用し、造船所における溶接ロボットの教示データを自動作成するツールを開発しました。加えて、チェックシートやシミュレーションデータも連携して生成することで、現場全体の効率化を図っています。

背景:なぜExcel VBAでの自動化が必要だったのか?
造船業界では、巨大な「ブロック」単位で構造物が組み立てられ、その各ブロックに対して何百カ所箇所を超える溶接作業が必要になることもあります。
溶接ロボットを導入すれば、人員削減や品質安定化が期待できますが、実際の運用には以下のような課題が伴います:
ロボットは教示データがなければ動作しない
ブロックごとに溶接箇所や形状が異なり、都度異なる命令を作成する必要がある
図面を読み取ってロボット指令に変換する作業は人手と時間がかかる
シミュレーションや現場チェックも別作業として発生する
そのため、単にロボットを導入しただけでは、命令作成の工数が新たなボトルネックとなっていました。
解決した課題と実装内容(Excel VBAでの処理)
今回開発したExcel VBAツールでは、以下のような多機能な自動処理を実現しています。
1. 教示データの自動生成
図面情報をExcel形式で入力
各ブロックにおける溶接箇所をもとに、ロボット命令(教示データ)を一括生成
ロボットが対応可能かどうかをルールベースで判定し、不可箇所は除外(例:隙間が狭くアームが入らないなど)
2. チェックシートの自動出力
教示データと図面情報をもとに、作業者が目視確認しやすいチェックシートを自動作成
現場の「仮組み」作業後に、図面通りに構成されているかの確認項目を含む
チェック結果を効率よく入力・記録できるUI構成
3. STLデータ(3Dブロックモデル)の自動出力
溶接対象の3次元ブロックデータ(STL形式)をVBAで自動生成
ロボットシミュレーションソフトに連携させ、実際の溶接動作の事前確認が可能に
STLデータの精度により、シミュレーション結果の信頼性も向上
導入効果・成果
本ツールの導入により、以下のような効果が得られました:
教示データ作成に要する作業時間を大幅に削減
教示ミスや漏れの防止により、現場でのトラブルが大幅に減少
チェック工程の帳票出力・記録・フィードバックが一元化され、再利用も可能に
STLモデルの導入により、シミュレーション精度と現場適合性の事前検証が可能に
まとめ
Excel VBAを活用すれば、一見高度で専門的に見える業務フローでも、現場目線でカスタマイズされた自動化ツールを構築することが可能です。特に製造現場では、手作業で膨大な時間がかかっていた処理を、即時・正確に処理できるシステム化によって、業務全体の質とスピードを飛躍的に向上させられます。
今後も、こうした現場密着型の業務改善事例を紹介していきたいと思います。



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